コラム “志・継・夢・承”
事業承継やM&Aにまつわる思いを
気ままに綴っています

2020年

“できたこと” と “できなかったこと”Vol.29

いつもとは違うことずくめの2020年もあと1ヶ月足らずとなりました。新型コロナの感染が日本で初めて確認された1月16日から、長いような短いような“Withコロナ”の1年が終わろうとしています。1年を振り返れば、やるはずだったけど、あるいは、やりたかったけど“できなかったこと”がたくさんあります。もちろん、こういう時だからこそ、こんな時でも“できたこと”もあったでしょう。

例えば、“できたこと”でいえば、今年の日本国内のM&A件数は、コロナ渦でも、昨年と同じくらいの件数が成立しそうです。もちろん、昨年とはM&Aの背景や理由は異なるものの、こういう時期でも、あるいは、こういう時期だからこそ、引き続き、売り買いともにM&Aのニーズはあるといえます。

コロナ禍の今は、「事業の承継」よりも「事業の存続」が優先されているかと思いますが、自分がやらなくてはと考えるか、いや、誰かに早く任せた方がいいと考えるか、どちらが正解、不正解という話ではありません。オーナー経営者が、会社を譲渡するという決断に至るまでの深い想いや葛藤は本人にしかわからないものです。経営者として“できたこと”や“できなかったこと”、もっと“やりたいこと”を思い巡らせ、考えに考え抜いたうえでの決断であり、覚悟です。特に、今のような有事の状況下であれば悩んで当然ですし、とことん悩むべきです。今なのか?今ではないのか?来年ならいいのか?3年後ならできるのか?

人にとって“できなかったこと”、“できたこと”、さらに“やりたいこと”は、1年という暦の期間に限らず、一生という時間のなかにも同じようにあります。そういうなかで、『いつまでもずっと一緒に・・・』という約束は“できないこと”です。人は、人生において、都度、どこかで線を引き、区切りをつけなくてはなりません。暦や決算や周年は、単なる”目盛り”にしか過ぎません。経営者自らが“今だ!”という決断をして線を引けば、そこが“区切り”です。

私自身も、『今年もできなかったな・・・』ということは、毎年、山のようにあるのですが、今年は、いつも以上にたくさんあったかと自省しています。でも、今が、新しい“常態”であるなら、いつまでもコロナを言い訳にはできません。この年末年始は例年とは違う景色になりそうですが、皆様におかれましては、いつもと変わらない、健やかな年越しになられますように、そして、来年は、“できたこと”を1つでも多く増やすことができる1年となりますように願っています。

以 上

<真>
2020年12月

“続ける”という戦いVol.28

新型コロナ感染拡大以降、未だ回復の兆しが見えない業界も多いなか、一部の大企業では、今期決算の赤字見通しの発表と同時に、「早期・希望退職の実施」「一時出向」「兼業・副業の容認」など雇用に関わる施策にも踏み込み始めました。中小企業の廃業や倒産も徐々に数字として顕在化し、街中でも飲食店の空き店舗が目立ち始めるなど、規模を問わず、企業の存続を賭けた戦いが本格化してきました。

誰にとっても想定外の状況となっている2020年ですが、めでたく、「創業100周年」を迎えた企業があります。マツダ、イトーヨーカ堂、近鉄百貨店、横浜銀行といった大企業をはじめ、全国で1,458社の企業が大きな節目を迎えました。ちなみに、業歴100年を超える企業は35,018社あるそうです。(東京商工リサーチ調査)

過去100年の日本では、関東大震災(1923年)、第2次世界大戦(1939年~)、オイルショック(1973年、1979年)、バブル崩壊(1991年)、阪神大震災(1995年)、アジア通貨危機(1997年)、リーマン・ショック(2008年)、東日本大震災(2011年)、そして、2020年のコロナ・ショックと、この100年、これでもかといわんばかりの災害や苦難が降りかかってきた歴史でもあります。始めることより続ける方が難しいと言いますが、いくつもの災禍を乗り越えて、100年続けるというのは大変なことです。そして、こうした企業は、もちろん、“事業承継”も乗り越えて、代々、事業を引き継いで、今に至っています。

実は、10月24日は、弊社、日本プライベートエクイティ株式会社の会社設立記念日です。2000年の会社設立から20周年を迎えました。100歳からみれば、まだまだ若輩者ですが、多くの方々に支えられて、ようやく二十歳です。この場を借りて、心から御礼申し上げます。
(*20周年のメッセージも、このホームページの 『NEWS』>『メッセージ』 に掲載しています。)

中小企業の事業承継支援にこだわりつづけて20年、我ながら、“ファンド”という仕事がよく続いてきたものだとも思います。私自身、オーナー経営者の方々にとっては息子世代の33歳で始めた仕事ですが、20年という年月を経て、ようやく、オーナー経営者と同じ目線や心情で話ができる年齢に近づいてきました。

この20年、年々、事業承継問題を抱える中小企業は増える一方でしたが、残念ながら、ファンドの役割や意義が正しく周知されたという実感はありません。でも、これからの10年はこれまでと比較すれば“倍速”で進むことでしょう。求められる限り、続けたいと思います。

経営者を100年続けることは不可能ですが、会社を100年続けることは可能です。変えるべきことと変えるべきでないことを見極めて、常に変化対応し、次の世代へと継承する。いかなる時代であろうと、中小企業も大企業も“続けること”への戦いは続きます。

以 上

<真>
2020年10月

“特別な夏” = もどかしい季節Vol.27

なかなかコロナの話題から抜けられません。今年の夏は、帰省もなく、花火大会や高校野球もなく、季節感もすっかり薄れた、ただ暑いだけの夏でした。こういう特別な夏は最初で最後にしたいものです。

ただ、世の中は確実に変わっています。例えば、Zoomをはじめとするインターネットを介したWeb会議システムはここにきて急速に普及しましたし、大学のオンライン授業も試行錯誤しながら日々進化しています。同様に、事業承継やM&Aに関するセミナーも、これまではオーナー経営者を何百人とカンファレンスホールやホテルに集めて、「著名な経営者の講演」→「オーナー経営者のM&A体験談」→「具体的なM&A活用法」→「相談会やアンケートによるフォロー」という流れで開催されていましたが、こうしたリアルでの集客モデルが崩れ、直近のセミナーは、海外では“ウェビナー(Web+Seminar)”と呼ばれていた、ネット上での開催へと急速に移行しています。

私も後学のため、M&Aがテーマのウェビナーにいくつか参加してみました。今後のM&A動向を知るというだけでなく、聴衆としてどう受け止められるものか?自分が話す立場となった時に訴求できるのか?など、いろいろな目的をもって参加してみました。

まず、聴く側としての感想は、『非常に気楽!』です。人目も気にしなくていいし、(主催者には申し訳ないですが)途中で自由に離席も退席もできます。一方通行で、現場の熱気や空気感が伝わってくるわけでもないので、まるでTVを観ているか、ビデオ研修を受けている感覚です。また、講演する立場としては、聴衆の顔が見えず、直接の反応が読めないなかでは台本通りに話すしかなく、話しづらそうな気がしました。

ウェビナーが普及して、地方の企業経営者も時間や費用を気にせずに気軽に参加できて、情報収集やきっかけづくりの場が増えるのはいいことですが、聴く人の母数が増えても、その結果、心が動き、行動に移す人が今まで以上に増えるかどうかは未知数・・・という印象です。最近、季節感が薄れたというのは、公私ともに対面で人と会う機会が減っている、移動が少なくなっているせいでもある気がしますが、日々、心の機微に触れる出会いや場面が少なくなることで、“事業承継”といった課題に対しても、心や頭が動かなくなるのではないかと心配です。

しかし、時は待ってはくれません。2025年までの5年で経営者が70歳を超える中小企業・小規模事業者で127万者が後継者未定という事実は変わらず、そのうちの一部の経営者は、既に、コロナを契機に早々に答えを出して、廃業や解散に向っています。本当に残す方法がないのか、残せないのかを今一度考えてもらいたいのですが、やはり、こういうことは実際に会って話をしないと始まらないのでしょうか・・・。季節は移り変わっても、もどかしい季節は続きそうです。

以 上

<真>
2020年9月

“結業”という選択Vol.26

先の見えない状況から早く抜け出して、少しでも先が見たくて徐々に(無理矢理?)普通の生活を取り戻そうとしていますが、世界や時代はコロナで否応なく変わっています。例えば、身近なところでは“昭和”や“老舗”がコロナにとどめを刺されています。

地元の話で恐縮ですが、当社のある東京・神保町近辺は古書店街や学生街として知られていますが、カレー激戦区といわれるなどユニークな飲食店も多い町です。ところが、最近、当地で1955年から営業する餃子専門店「スヰートポーヅ」、その斜向かいで1966年創業の洋食屋「キッチン南海」、TVや映画のロケでも有名な1979年開店の大衆居酒屋「酔の助」といった昭和の名店の灯がコロナ・ショックという爆風で相次いで消えています。いずれのお店も客足が途絶えることのない行列店や人気店でしたのでなおさら驚きです。もちろん、コロナは1つのきっかけにしか過ぎず、ここ数年、神保町では、昭和の面影を残す飲食店の閉店が続いており、どの店も固定客やファンはいながらも、設備の老朽化や人手不足、後継者難に苦しんでいました。だから、コロナで資金も気力も体力も限界となり、『ここが潮時、余力があるうちに』『もう借金は無理』という決断に至って当然なのかもしれません。2016年以降、ここ4年は4万件強で推移していた休廃業や解散が2020年は5万件と過去最多になりそうだとの調査報告も出てきました。みなさんのまわりでもこうしたことが少なからず起きているのではないでしょうか。

コロナ禍の休業や外出自粛からそのまま廃業や閉店になると寂しいものがあります。自主的にやめるとはいえ、店もお客さんもお互いに心の準備もなく突然に、それも必ずしも廃れてしまったわけではないのに“廃業”です。もう一度行きたかった、また食べたかった、会いたかった・・・という思いが残ります。

ここで考えたいのは、“結業”という終わり方です。コロナや災害は避けようがないけれど、またこうしていつ何が起こるかわからない。だから、自分でしっかりと『いつまでに』という期限を決めて結び終えるのが“結業”です。“廃業”と“結業”は、自ら決断して終えるのは同じも、その過程や思いは違うものにしたいという意味を込めています。店も会社もそして人も同じで、ずっといつまでも・・・なんてことはないのはわかっているので、せめて、ありがとう、お疲れさま、と言って、結び終わらせたいのです。

廃業や解散は資産超過の状態だからできることでもあり、周囲に迷惑を掛けずに終えられるケースはひと握りです。現実には、『やめたくてもやめられない』『残したいけど残せない』という苦悩や葛藤が溢れています。もしかしたら、今ここで踏ん張るのは、後々まで会社を残すためではなく、“結業”するためかもしれません。でも、いずれにしても、経営者としては終えるまでが経営、これからが本当の正念場で、コロナではなく自分との戦いとなります。

以 上

<真>
2020年7月

喉元過ぎても熱さを忘れずVol.25

新型コロナウイルスの感染拡大は、戦後最悪の危機として“コロナ・ショック”と呼ばれるようになりました。まだ現在進行形ではあるものの、日本は非常事態宣言を一旦乗り越えたことで少し安堵感が広がっています。しかし、『STAY HOME』といわれた約2ヶ月の間、誰も経験したことのない不安と我慢の日々を送ったことで、人の価値観や意識は大きく変わりました。

例えば、企業経営という観点では、日本電産の永守会長が『50年、自分の手法が正しいと思って経営してきたが今回それが間違っているとわかった。収益が一時的に落ちても社員が幸せを感じる働きやすい会社にする。そのために50くらい変えるべき項目を考えた。』と話されたり、ユニクロの柳井会長兼社長が『何のために事業をやっているのか、どんな価値を提供し、誰のために役立っているかを自らに問いかけ、原点に戻ることが重要。会社のすべてをつくり替える覚悟をしている。』と発言されています。過去に何度も危機を乗り越えてきた、日本を代表するオーナー経営者が『自らや事業を根本から変えなくてはならない』というほどの危機感をもつ事態に、なんともいえない焦燥感に駆られます。

中小企業のオーナー経営者の多くが、事業を根本から見直すとき、事業存続、事業承継、M&A(売却)、廃業、破産・・・といった言葉が頭の中を駆け巡り、このまま事業を続けるのか、ここでやめるのかを自問自答されることでしょう。一方で、不透明な時代に生き残りを賭けてM&A(買収)を検討する会社もあるでしょう。これからのM&Aは、売り手も買い手も今まで以上に本気のM&A、本当に必要な“双方とも真剣勝負のM&A”だけが成立するものと想定されます。

これからの時代を「ニューノーマル(新常態)」「新社会」「新日常」などと呼び始めていますが、少なくとも“Afterコロナ”の前に“Withコロナ”の時期があることは明らかです。その間、元の生活や状況を取り戻そうとする過程において、日本の全ての経営者には『変えるべきことはなにか?』が問われ、さらに、『捨てるべきものはなにか?』『生み出すべきものはなにか?』という根源的な問いが突きつけられます。経営者一人ひとりが、今までにないほどの重い覚悟と厳しさをもって現実を受け止め、今だからこその難しい判断を下し、そして、先の見えないなかでも前に踏み出す勇気が求められています。

ただ、“喉元過ぎれば熱さ忘れる”のが人間の悲しい性です。だから、喉元にまだ熱さを感じている今のうちに、今、考えていること、感じたこと、決めたことにすぐ着手し、実行に移すべきです。コロナの“第2波”が来ようが来まいが、時は進み、人は齢を重ね、時代は変わっていきます。

以 上

<真>
2020年6月

中小企業にとっての“プライマリ・ケア”Vol.24

新型コロナウイルス感染拡大のなかで「医療崩壊」という言葉が生まれました。東日本大震災の時も地震や津波の直接的被害に続き、想定外の次なる危機となったのが「原発事故・放射線被ばく」でした。今回も、新型コロナウイルスの感染地域や感染者数に気をとられていたら「医療崩壊」という新たな危機が立ちはだかりました。悲しいかな、人は生死を前にして初めて事の重大さに気づきます。普段の病気ですら、命に関わる事態にならなければ動かないゆえ、コロナに限らず、平時でも病気の兆候を見逃さない行動と医療のしくみが求められています。

欧米では“プライマリ・ケア”というしくみがあります。日本でいう“かかりつけ医”で、個人が抱える問題をまず相談すれば、家族や地域も含めて継続的かつ総合的に診療するという身近な医療サービスです。今後、日本でこうした役割を期待されているのが、前回のコラムでも触れた、専門医制度の19番目の専門領域として新設された「総合診療専門医」です。個人の健康上の不安や課題、特性を下記の3つの視点で“診る”能力を備えたスペシャリストでありゼネラリストです。

  1. 個々の臓器にとどまらず、病気の背景と因果関係を推察できる高い診断力を有し、他の専門医とも連携しながら、幅広い知識と視野で「多角的な視点から診る」。
  2. 家族関係や職場環境など病気の背景を知り、その原因にアプローチする。患者本人と家族、学校や職場とも連携して「家族や生活背景まで診る」。
  3. 医療の守備範囲を保健福祉、介護から住宅環境、働き方、地域行政にまで広げ、住民の医療ニーズを地域に反映するように「地域全体を診る」。

こうした医療のしくみや医師を地域の中小企業支援に置き換えて考えれば、そのまま、中小企業・小規模事業者の事業承継を支援する理想的なネットワークが見えてきます。現在127万者といわれる潜在的な後継者不在の中小企業は、経営者が70歳を超えても後継者がいないことが明らかでありながら、今は無症状で過ごしているということです。

しかし、来るべき時は確実に近づいています。経済産業省はこの事態に対して危機意識を持ち、まさに“事業承継版の緊急事態宣言”のように、この10年間を「事業承継の集中実施期間」と位置付け、10年で60万者の第三者承継を実現するべく、『第三者承継支援総合パッケージ』を展開しています。“事業承継の総合診療専門医”による中小企業向け“事業承継のプライマリ・ケア”は、この10年だからこそ必要なしくみです。

コロナ・ショックを契機にいろいろなことが変わり始めました。“普通に生きる”ことの大変さとありがたさを一人ひとりが実感したからです。事業承継も同じです。一人ひとりが意識を変えて行動すれば守れるものがたくさんあるはずです。

以 上

<真>
2020年5月

医療から“診る”中小企業支援Vol.23

“コロナ・ショック”が国内外に深刻な影を落としはじめました。カネやモノではなく自分自身も含めた“ヒト”が起点なのが今までになく怖いところです。37.5℃以上の発熱が4日続けば、「帰国者・接触者相談センター」に相談するというルールですが、不安に思う人が急増すればセンターもすぐにパンクしますし、4日待たないといけないのも辛いです。こんな時、身近に信頼できるお医者さん、いわゆる“かかりつけ医”がいるのが理想です。かかりつけ医とは、『最新の医療情報を熟知していて、なんでも相談でき、必要な時には専門医や専門医療機関を紹介できる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師』です。

この場合の患者さんを“中小企業”に置き換えれば、“かかりつけ医”は、『最新の社会経済状況を熟知して、経営者がなんでも相談でき、必要な時には専門家や金融機関を紹介してくれる、身近で頼りになる、経営・税務・財務・法務の総合的な能力を有する人』となります。

例えば、コロナといえば、「帰国者・接触者相談センター」に相談するように、事業承継の悩みを誰かに相談したいと思ったなら、まず、中小企業庁が47都道府県に設置した「事業引継ぎ支援センター」が窓口になるでしょう。中小企業診断士や金融機関OBなどのプロフェッショナルが助言や支援、マッチングをしており、2018年度の相談件数は11,477社で成約件数923社、累計の相談件数も36,000社超、成約件数は2,400件を超えており、相談者の約7割が従業員10名以下の小規模事業者とのことです。

また、医療の世界では、“プロフェッショナル”である専門医の質を担保するために2018年度から「新専門医制度」が始まりました。地域に住むあらゆる年齢・性別の患者さんのすべての治療に向き合うという『総合診療専門医』が新設されました。
『主に地域を支える診療所や病院において、他の領域別専門医、一般の医師、歯科医師、医療や健康にかかわるその他の職種等と連携し、地域の医療、介護、保健など様々な分野でリーダーシップを発揮しつつ、多様な医療サービスを包括的かつ柔軟に提供する医師』と定義されています。例えば、同じ専門医でもある「内科医」との違いは、『地域社会を診るかどうかであり、総合診療専門医は地域社会に入って、必要な医療が何かを感じ取り、それを勉強して補完する役割を担っている』ことです。実態や運用ではまだ課題もあるのでしょうが、今、地域の中小企業に求められているのも、まさに『総合診療専門医』のような存在です。

コロナも気が気ではないですが、今、日本の医療が目指す一つの姿には中小企業支援への示唆がいろいろとありそうです。もっと知り、もっと学ぶことで、まったく違う世界の苦労や現実も感じることができるようならと思います。日々、医療現場で働かれている皆さんへの感謝と敬意を込めて。

以 上

<真>
2020年4月

『お先に失礼!』 と去っていくVol.22

2020年2月 「高年齢者雇用安定法の改正案」が閣議決定され、定年年齢を現行の65歳から70歳まで引き上げて就業機会を確保することが企業の努力義務となりました。早ければ来年4月に施行され、『人生100年時代』、『健康寿命は男性80歳、女性86歳』といわれる昨今、元気で意欲あるシニア世代が永く働ける環境づくりが企業に求められます。

75歳まで雇用延長できるように制度を整備する大企業もあります。人手不足に悩む中小企業にとっても、今いる社員や技能を持ったベテラン社員により永く働いてもらえるのはありがたいことです。

こうして、中小企業で社員が70歳を超えても働くことが当たり前になれば、当然、社長も、『みんな頑張っているから俺も頑張ろう!』、『日本電産の永守社長もユニクロの柳井社長も創業社長として70歳を過ぎても頑張っている。俺も頑張らなくては!』と考えても不思議ではありません。

でも・・・ちょっと待ってください!
社長という立場、経営者自身はどう処するべきなのか?やはり、経営者はこの時流の外に身を置くことも考えるべきではないでしょうか。社長が社長として永く働き続けることで会社は変わっていけるか?今までの延長線上での考え方で会社は変わり続けられるか?先送りを容認する経営が続くだけではないか?「社員が永く働くことのできる会社」と「社長が永く働くことのできる会社」は、全く別物です。

むしろ、経営者は、シニア世代や若手の社員に向けて『お先に失礼!』と言って会社を離れ、みんなから『ああいう人生はいいな』と羨ましく思われる生き方や第二の人生のありかたを見せてあげたいものです。でも、自分さえよければいいのかとはならないように、先に去るにあたっては、社員に多様な“生き方”を提供できる会社を残しておくべきです。

若手もシニアも生き生きと働いているか?組織が硬直化していないか?現場で技能の承継は進んでいるか?永く働くための人事制度になっているか?若手からシニアまで社員全員が多様な“働き方”だけではなく、多様な“生き方”を選択できる会社にしたうえで 『お先に!』 と颯爽と去っていく経営者はかっこいいです。

以 上

<真>
2020年3月

中小企業は日本の“宝” !?Vol.21

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

年末年始は、ジャンボ宝くじや七福神の宝船など、なにかと“宝”に縁がある時期ですが、中小企業も、日本の“宝”といわれています。小規模事業者も含めた中小企業は約360万者と日本の企業数の99.7%を占め、日本経済は中小企業が支え、中小企業の技術力が日本の発展を支えてきたと日本人の多くがそう思っているはずです。

しかし、それは日本人だけが思い込んでいる“中小企業神話”で、日本経済が30年間も停滞しているのは中小企業が多すぎることが原因で、中小企業の数を大幅に減らして生産性を上げなければ、日本に未来はない!と説くのが、デービッド・アトキンソン氏です。氏の著書『国運の分岐点』では、1964年以降、日本では一企業あたりの従業員数が激減、つまり企業数が急増し、特に1975年からの20年間で増加した170万社の企業のうち約150万社が従業員10人未満で、20年経ってもその多くが10人未満のままであると指摘しています。
日本経済を30年にわたり分析してきたアナリストで、今は日本の中小企業を経営するイギリス人というユニークな立場からの『中小企業は日本の宝と持ち上げるのはやめよう』という指摘は新鮮です。

ちなみに、“宝の山”といいますが、それは、宝が“山盛り”という状態ではなく“宝がたくさんある山”ということです。ゆえに、中小企業360万者のすべてが輝く“宝”というわけではなく、『中小企業は日本の“宝”』というのは、正確には、『日本の中小企業は“宝の山”』というべきかもしれません。

そして、その“宝”も、必ずしも、万人にとって同じように価値があるものではなく、その価値を認めるかどうかは人によって違います。また、価値を認めたとしても、一生大事に抱えていられるものではなく、誰かに受け継いでもらわないと後世には残りません。

中小企業という“宝”を持っているオーナー経営者も同じです。いざ、その宝を後世に残そうとした時に、それが、自分にとってはすごく大切な宝であっても、親族でも第三者でも、自分以外の誰かにとって同じように価値があるものとは限らず、相手がその価値を認めない限り、受け継いではもらえません。

2020年は、『第三者承継』という言葉を耳にすることが多くなりそうです。
オーナー経営者には、その会社が“第三者”からみても“宝”であるかどうかが問われるでしょう。宝は後生大事に抱えこむものではなく、輝かせて、周囲に価値を認めてもらって、引き継がれてこそ、日本の“宝”となります。

以 上

<真>
2020年1月