コラム “志継夢承”事業承継やM&Aにまつわる思いを気ままに綴っています・・・

● 後継者候補を選ぶ理由Vol.6

『竈(かまど)の灰まで俺のもの・・・』というオーナー経営者は、さすがに最近は少ないでしょうが、年齢を重ね、会社も成長すれば、いつまでも『俺の会社!』といっているわけにもいきません。会社を10年後、20年後にどういう形で残したいか?伸ばしたいか?その夢や思い、だけではなく、社員や銀行借入も引き継いでくれる後継者候補は誰かを選ばなくてはなりません。

 ついては、中小企業経営者を対象とした事業承継のアンケート調査から、「後継者に関する質問」を
2つと各々の質問に対して最も多かった回答をピックアップしてみました。

質問:後継者候補として選んだ理由は?
回答:『経営者の一族だから』(38.9%)
出所:「平成27年中小企業の事業承継実態調査」(東京商工会議所)
質問:親族に事業を引き継ぐ際の問題は?
回答:『経営者としての資質・能力の不足』(60.7%)
出所:「中小企業白書2013年版」(中小企業庁)

 この2つの回答を単純に読めば、オーナー経営者は、『後継の経営者としての資質・能力は不足しているが、親族だから後継者候補に選んだ』ということになります。

 これまで経営者として常にBestの判断を積み重ねてきたはずですが、“後継者を選ぶ”という、経営者としての最後の一番大切な事業承継の意思決定も、社員や会社にとってBestの判断になっているといえるでしょうか?本来、後継者候補は、『経営者としての資質・能力』を基準に選ばれるべきです。

 が、それができない事情として、下記のようなアンケート結果もありました。

質問:親族以外に事業を引き継ぐ際の問題は?
回答:『借入金の個人保証の引継ぎが困難』(40.5%)
『後継者による自社株式の買取りが困難』(40.0%)
出所:「中小企業白書2013年版」(中小企業庁)

 この結果をみると、消去法で、親族内での承継せざるをえない状況にあるともいえます。ただ、最近は、親族外への承継を選択するオーナー経営者は増えており、当社が運営する「事業承継ファンド」をはじめ、個人保証の問題や株式の買い取り資金の問題をクリアして、親族以外の優秀な人材に経営を引き継ぐという道も拓けてきました。

 『親族以外への事業承継は無理!』という先入観を捨て、優先順位として、まず、経営者としての資質と能力があるのは誰か?という基準で後継者候補を見極めたうえで、その候補人材にどうやって株式と経営を承継するかを考えてみる必要があります。

<真>
2017年7月
● “M&A” = “Mind” & ”Agreement”Vol.5

 “M&A”という言葉はすっかり世の中に定着し、Mergers & Acquisitionsの略、つまり、“合併と買収”という意味であると広く知られるようになりました。でも、一昔前、金融業界では、M&Aは、“千三つ(せんみつ)”、つまり、千に三つしか当たらないような可能性の低い話で、“M&A”は、“め(M)ったに”&“あ(A)たらない”の略だと揶揄する人もいました。

 この“言葉遊び”に乗るならば、私が好きなのは、“M&A”とは“Mind & Agreement”、つまり“心と意見の一致”だという比喩(例え)です。この例えは、北海道の食品スーパーのラルズ会長であり、業界で緩やかな企業連合の形成を目指すアークスグループ社長の横山清氏が「M&Aのあるべき形」として提唱されているものです。

 横山社長は“八ヶ岳連峰経営”という考えの下、食品スーパーのM&Aを積極的に進め、富士山のような1つの高い山(企業)ではなく、同じ高さの山々が連なる連峰(グループ)となり、売上1兆円規模の企業連合を形成することで、大手GMS(総合スーパー)に対抗することを目指されています。現在、アークスグループは、北海道や東北に拠点を置くスーパーなど9社で食品流通グループを形成し、年商5,000億円、グループ店舗数330店を超える規模となっています。

 M&Aに際して、買い手と売り手のどちらが上か下かということではなく、M&Aとは「対等な立場で手を握る」ことであるという、横山社長のご経験から生まれた“Mind & Agreement”という言葉は、今後ますます増える中小企業のM&Aに対しても非常に示唆に富んでいます。当事者の間で「売った」という後ろめたさや「買った」という優越感が垣間見られるようであれば、それは“ディール(案件)”としては成立しても、その後、双方の友好的な関係や永続的な存続と発展が約束されるかは疑問です。

 これからの時代、オーナー経営者であれば、会社を「売る」ことや「買う」ことを一度も考えたことがないというわけにはいきません。「売る」のも「買う」のも何らかの理由があってのことですが、そのどちらが上でも下でもなく、買い手と売り手が心を一つにしてWin-Winの関係を築くことを目指したM&Aであれば、きっと、関係当事者全員が後々まで幸せでいられるはずです。

 “Mind & Agreement”を超える例えをずっと考えているのですが、いまだに思いつきません・・・。

<真>
2017年5月
● “M&Aセミナー” に参加する動機Vol.4

 春待ち遠しい3月、日本各地で、オーナー経営者向けの”M&Aセミナー”が一足早く花盛りです。

 『経営者のための戦略的M&A活用セミナー』、『友好的M&Aによる企業譲渡体験談』、『企業経営者のための成長戦略セミナー』等々、大小さまざまなM&Aセミナーが、毎週、日本のどこかで開催されているといっても過言ではなく、それも一流ホテルやコンベンションホールでの数百人規模の開催にもかかわらず、どのセミナーも多くのオーナー経営者で満員御礼状態です。

 さて、こうしたM&Aセミナーに参加される経営者の皆さんは、M&Aで会社を“買う”ことに興味があって参加するのか?あるいは、会社を“売る”ことを考えて参加されているのか?実は、最初はM&Aで会社を“買う”ことに関心があってセミナーに参加したつもりが、セミナーを聞き終えて、“売る”ことを真剣に考え始めたという経営者も少なくありません。

 新しい市場の開拓や規模拡大のためにM&Aで買収を考えている経営者の思いは、既存事業の限界や先行き不安を感じているゆえであるともいえます。つまり、会社を“買いたい”と“売りたい”という気持ちや置かれている状況はいつどちらに転んでもおかしくない紙一重なのです。“買いたい”から“売りたい”に心変わりした経営者の方は、セミナーで話を聞きながら、業界の先行きや自らが置かれている状況を改めて考えて、“会社を売る”という選択肢もありなのかと考えるようになり、さらには、“売る”というより、『今後も会社を成長させてくれるパートナーが必要!』という思いに至ったのかと思われます。経営者の皆さんは、会社を“買う”か“売る”かの二者択一を迫られれば、今の気持ちはどちらに近いでしょうか?

 3月決算の会社の経営者の方は、今期の業績も見えて、既に来期を見据えておられるかと思います。M&Aセミナーに参加して、いつもとは違った空間で、同じような思いの経営者がこんなにもいるのかという安堵や危機意識を感じながら、著名な経営者の話や会社を譲渡した経営者の体験談を聞き、自分自身と会社の立ち位置を改めて確認し、会社の将来について一人、熟慮するのもいいでしょう。

 ちなみに、M&Aセミナーに参加するにあたっては、買うにせよ、売るにせよ、“誰が”そのセミナーを主催しているかにもご留意ください。セミナーに申し込んだ時点で、既に、M&Aに向けての第一歩は始まっています。

<真>
2017年3月
● “廃業”ではなく“結業”と言うことのススメ!Vol.3

 2016年に休業、廃業もしくは解散した会社が2万9,500件を超え、過去最多を更新したそうです(東京商工リサーチ調べ)。大幅な赤字ではないものの、後継者難や人手不足といった先行き不安から経営が行き詰る前に自主廃業を選ぶケースが増えているとのことです。倒産件数は8,446件と、2009年以降8年連続で減少したのとは対照的に、中小企業経営のもうひとつの厳しさを示しているといえます。

 この“休業”や“廃業”という言葉は、正式な法律用語ではなく、民間調査会社が各々定義しているものです。例えば、東京商工リサーチの場合、資産が負債を上回る“資産超過”の状態で理由を問わず事業を停止することと定義しており、資金難や業績不振による「倒産」とは別物です。

 “休廃業”も企業の新陳代謝を進めるうえではやむをえないことですし、これからもますます増えるでしょう。ただ、資産に余力がある状態なら、廃業する前に何か策を講じることができたケースもあるのではないかと思ってしまいます。

 その策とは、例えば、“M&A”や“事業承継ファンド”の活用です。いろいろな解決策やネットワークを有している専門家や金融機関に相談すれば、事業会社への譲渡で、オーナー経営者の手元に引退後の生活資金をより多く残せたでのではないか?とか、社員の雇用もそのまま維持できたのではないか?あるいは、“事業承継ファンド”の存在を知っていれば、社員に経営を継がせて会社を残し、得意先との取引もそのまま継続できたのではないか・・・などと考えます。

 もちろん、周囲に迷惑をかけずに幕を引くのも大変なことであり立派なことではあるのですが、誰にも迷惑をかけないというだけではなく、オーナー経営者ご自身はもちろん、社員も取引先もみんながよりハッピーになる形で幕引きができるのなら、その可能性も追求してみるべきだと思います

 これからも、ますます“廃業”が増えていくなかで、この“廃業”という言葉の“廃”の字、どうしても、廃棄、廃止、廃絶、廃墟、荒廃・・・といった後ろ向きのイメージがつきまといます。このネガティヴな響きやイメージをなんとかしたいものですが、世の中に“認知症”という言葉が定着したように、“廃業”も前向きに取り組めるようなイメージの言葉に言い換えてみてはどうでしょう。例えば・・・“結業”とか。

 事業を“結”び、しめくくり、終わりにする。“結”という字は、結婚、結実、完結、結論・・・と前向きなイメージにもなります。どうやって業を“廃”らせるのかではなく、どうやって業を結び終えるか。結び目であれば、また始められる気もします。

 日本の中小企業の“結業”のしくみづくりは、弊社も事業承継ファンドという立場から取り組んでいきたい課題です。

<真>
2017年2月
● 会社を “買う理由”Vol.2

 昨年(2016年)のM&Aを振り返ると、ソフトバンクによる英アーム・ホールディングスの買収(約3兆3,000億円)という、日本企業による海外企業のM&Aでは過去最大となる案件がありました。アーム社は、半導体の設計図を描くというIT(情報技術)産業の最上流工程の根幹をなす黒子的存在の企業で、あらゆるものがインターネットにつながる“IoT時代”の到来を見据えた買収と言われていますが、孫社長ご自身が、今回のM&Aを『囲碁なら50手先を見た投資であり、常人には理解されない』と語っているように、確かに、ソフトバンクを“通信会社”と考えれば、アーム社を“買う理由”は一見わかりづらいものです。

 そもそも、ソフトバンクは1981年にパソコンソフトの卸売、出版業からスタート、その後、国内外でM&Aを展開し、時代とともに、その主たる事業を変化させてきましたが、2000年代以降の日本テレコムやボーダフォン日本の買収等により、最近では“情報通信”の会社というイメージが定着していました。過去には、情報通信以外の買収も手掛けていますが、孫社長の場合、M&Aでコングロマリット(複合企業集団)の形成や企業規模の拡大を目論んでいるわけではなく、「事業家」と「投資家」の2つの顔と資質をもって“主たる事業”と“投資事業”を並行して進め、“主たる事業”を巧みに変化させながら成長を遂げてきたといえます。

 ソフトバンクのM&Aに象徴されるように、会社を「買う」ときのキーワードは“成長”です。業界も会社も“成熟”してくれば、“成長”を求め、M&Aという経営戦略に行き着きます。

 M&Aで会社を「買う理由」は、次の4つと言えます。
 ① 既存事業を強くする(=強化) 
 ② 既存事業を広げる (=拡大)
 ③ 新規事業に進出する(=創出)
そして、この「強化」「拡大」「創出」を進めるための
 ④ 時間を短縮する(=加速) ということです。

 既に、日本は年間30万人に迫る勢いで人口が減少するという、誰も経験したことがない時代に突入しています。そうしたなか、これからも今までの延長線上で事業を続けていけるでしょうか?『他社を買うことを考える余裕もない』、『ソフトバンクのM&Aなど別世界の話』などと言ってはいられません。むしろ、中小企業だからこそ“成熟”から“成長”へと切り替えられるチャンスがあり、成長を実現するためのM&Aはより効果的な戦略となります。オーナー経営者として、“投資家”ではなく“事業家”として会社の将来を見据え、成長を続けたいと願うなら、そこには、“強化”“拡大”“創出”“加速”という、会社を“買う理由”が必ずあるはずです。

<真>
2017年1月
● 事業承継の計、まず一歩!Vol.1

 新しい年を迎えました!

 年の瀬に除夜の鐘を聞いて煩悩を振り払った(?)せいか、毎日同じ太陽でも、元旦、初日の出のご来光を浴びると清清しくありがたい気分になります。

 年を重ねるごとに一年がどんどん短く感じられるようになっていますが、同時に、高齢化社会、人口減少社会、一億総活躍社会へと着実に歩みは進み、働くことのできる(働かないといけない?)年齢はさらに上がってきています。

 しかし、一方では、こうした流れと逆に、事業の承継を考えて実行に移されるオーナー経営者の方の年齢は年々若返っていたりします。実際、弊社に相談にいらっしゃるオーナー経営者の方も、以前から、意外と若い50代のオーナー経営者が多かったとはいえ、ここ数年はさらに若くなり、40代の方からの相談も珍しくありません。客観的に見れば、まだ若いのに、それも、こんな優良企業をどうして手放すのだろう?といった、素朴な疑問が湧いてくる話も多いです。ただ、むしろ、若い経営者だからこそ、会社の実力や自分自身の経営力、これからの時代や業界環境を冷静に見据え、外部の力も前向きに活用して “事業承継”という経営戦略を実現しようという、そんな世代であるといえます。

 “後継者不在”という後ろ向きの課題の解決にとどまらず、未来志向の前向きな成長戦略の一環として“事業承継”を捉え、会社の存続と発展を同時に実現する方法を考えているのです。こうなれば、事業承継はもはや“年齢”が理由ではなくなります。

 経営者にとって、引退して事業を承継するという選択は、会社や社員のことを大切に思ったうえでのことではあるものの、やはり、その決断と実行に至るまでは悩みに悩むものです。ただ、少しでも早く決断すれば、その後に採りうる選択肢も増え、前向きかつ柔軟に次の手が考えられるようになり、さまざまな可能性が広がります。まだまだ気力体力とも十分なうちに、経営者という立場から一歩離れて精神的にも余裕ができることで、今までとは違った立場や視点で経営への助言や応援もできるようになります。

 同じ太陽でも“初日の出”になればありがたく感じるように、自分自身がどういう気持ちで向き合うかで物事の捉え方は大きく変わってきます。きっと“事業承継”も同じかと思います。なにをもって区切りや節目とするのか、どこで線を引くか、気持ちの持ち方によって、昨日とは違った景色が見えてくるはずです。今年こそ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか?もちろん、一歩踏み出すことで悩みに悩む一年になるかもしれません。でも、今、勇気を持って踏み出した“一歩”で、来年の初日の光はまた違った輝きに映ることになるはずです。

<真>
2017年1月