コラム “志継夢承”事業承継やM&Aにまつわる思いを気ままに綴っています・・・

● “廃業”ではなく“結業”と言うことのススメ!Vol.3

 2016年に休業、廃業もしくは解散した会社が2万9,500件を超え、過去最多を更新したそうです(東京商工リサーチ調べ)。大幅な赤字ではないものの、後継者難や人手不足といった先行き不安から経営が行き詰る前に自主廃業を選ぶケースが増えているとのことです。倒産件数は8,446件と、2009年以降8年連続で減少したのとは対照的に、中小企業経営のもうひとつの厳しさを示しているといえます。

 この“休業”や“廃業”という言葉は、正式な法律用語ではなく、民間調査会社が各々定義しているものです。例えば、東京商工リサーチの場合、資産が負債を上回る“資産超過”の状態で理由を問わず事業を停止することと定義しており、資金難や業績不振による「倒産」とは別物です。

 “休廃業”も企業の新陳代謝を進めるうえではやむをえないことですし、これからもますます増えるでしょう。ただ、資産に余力がある状態なら、廃業する前に何か策を講じることができたケースもあるのではないかと思ってしまいます。

 その策とは、例えば、“M&A”や“事業承継ファンド”の活用です。いろいろな解決策やネットワークを有している専門家や金融機関に相談すれば、事業会社への譲渡で、オーナー経営者の手元に引退後の生活資金をより多く残せたでのではないか?とか、社員の雇用もそのまま維持できたのではないか?あるいは、“事業承継ファンド”の存在を知っていれば、社員に経営を継がせて会社を残し、得意先との取引もそのまま継続できたのではないか・・・などと考えます。

 もちろん、周囲に迷惑をかけずに幕を引くのも大変なことであり立派なことではあるのですが、誰にも迷惑をかけないというだけではなく、オーナー経営者ご自身はもちろん、社員も取引先もみんながよりハッピーになる形で幕引きができるのなら、その可能性も追求してみるべきだと思います

 これからも、ますます“廃業”が増えていくなかで、この“廃業”という言葉の“廃”の字、どうしても、廃棄、廃止、廃絶、廃墟、荒廃・・・といった後ろ向きのイメージがつきまといます。このネガティヴな響きやイメージをなんとかしたいものですが、世の中に“認知症”という言葉が定着したように、“廃業”も前向きに取り組めるようなイメージの言葉に言い換えてみてはどうでしょう。例えば・・・“結業”とか。

 事業を“結”び、しめくくり、終わりにする。“結”という字は、結婚、結実、完結、結論・・・と前向きなイメージにもなります。どうやって業を“廃”らせるのかではなく、どうやって業を結び終えるか。結び目であれば、また始められる気もします。

 日本の中小企業の“結業”のしくみづくりは、弊社も事業承継ファンドという立場から取り組んでいきたい課題です。

<真>
2017年2月
● 会社を “買う理由”Vol.2

 昨年(2016年)のM&Aを振り返ると、ソフトバンクによる英アーム・ホールディングスの買収(約3兆3,000億円)という、日本企業による海外企業のM&Aでは過去最大となる案件がありました。アーム社は、半導体の設計図を描くというIT(情報技術)産業の最上流工程の根幹をなす黒子的存在の企業で、あらゆるものがインターネットにつながる“IoT時代”の到来を見据えた買収と言われていますが、孫社長ご自身が、今回のM&Aを『囲碁なら50手先を見た投資であり、常人には理解されない』と語っているように、確かに、ソフトバンクを“通信会社”と考えれば、アーム社を“買う理由”は一見わかりづらいものです。

 そもそも、ソフトバンクは1981年にパソコンソフトの卸売、出版業からスタート、その後、国内外でM&Aを展開し、時代とともに、その主たる事業を変化させてきましたが、2000年代以降の日本テレコムやボーダフォン日本の買収等により、最近では“情報通信”の会社というイメージが定着していました。過去には、情報通信以外の買収も手掛けていますが、孫社長の場合、M&Aでコングロマリット(複合企業集団)の形成や企業規模の拡大を目論んでいるわけではなく、「事業家」と「投資家」の2つの顔と資質をもって“主たる事業”と“投資事業”を並行して進め、“主たる事業”を巧みに変化させながら成長を遂げてきたといえます。

 ソフトバンクのM&Aに象徴されるように、会社を「買う」ときのキーワードは“成長”です。業界も会社も“成熟”してくれば、“成長”を求め、M&Aという経営戦略に行き着きます。

 M&Aで会社を「買う理由」は、次の4つと言えます。
 ① 既存事業を強くする(=強化) 
 ② 既存事業を広げる (=拡大)
 ③ 新規事業に進出する(=創出)
そして、この「強化」「拡大」「創出」を進めるための
 ④ 時間を短縮する(=加速) ということです。

 既に、日本は年間30万人に迫る勢いで人口が減少するという、誰も経験したことがない時代に突入しています。そうしたなか、これからも今までの延長線上で事業を続けていけるでしょうか?『他社を買うことを考える余裕もない』、『ソフトバンクのM&Aなど別世界の話』などと言ってはいられません。むしろ、中小企業だからこそ“成熟”から“成長”へと切り替えられるチャンスがあり、成長を実現するためのM&Aはより効果的な戦略となります。オーナー経営者として、“投資家”ではなく“事業家”として会社の将来を見据え、成長を続けたいと願うなら、そこには、“強化”“拡大”“創出”“加速”という、会社を“買う理由”が必ずあるはずです。

<真>
2017年1月
● 事業承継の計、まず一歩!Vol.1

 新しい年を迎えました!

 年の瀬に除夜の鐘を聞いて煩悩を振り払った(?)せいか、毎日同じ太陽でも、元旦、初日の出のご来光を浴びると清清しくありがたい気分になります。

 年を重ねるごとに一年がどんどん短く感じられるようになっていますが、同時に、高齢化社会、人口減少社会、一億総活躍社会へと着実に歩みは進み、働くことのできる(働かないといけない?)年齢はさらに上がってきています。

 しかし、一方では、こうした流れと逆に、事業の承継を考えて実行に移されるオーナー経営者の方の年齢は年々若返っていたりします。実際、弊社に相談にいらっしゃるオーナー経営者の方も、以前から、意外と若い50代のオーナー経営者が多かったとはいえ、ここ数年はさらに若くなり、40代の方からの相談も珍しくありません。客観的に見れば、まだ若いのに、それも、こんな優良企業をどうして手放すのだろう?といった、素朴な疑問が湧いてくる話も多いです。ただ、むしろ、若い経営者だからこそ、会社の実力や自分自身の経営力、これからの時代や業界環境を冷静に見据え、外部の力も前向きに活用して “事業承継”という経営戦略を実現しようという、そんな世代であるといえます。

 “後継者不在”という後ろ向きの課題の解決にとどまらず、未来志向の前向きな成長戦略の一環として“事業承継”を捉え、会社の存続と発展を同時に実現する方法を考えているのです。こうなれば、事業承継はもはや“年齢”が理由ではなくなります。

 経営者にとって、引退して事業を承継するという選択は、会社や社員のことを大切に思ったうえでのことではあるものの、やはり、その決断と実行に至るまでは悩みに悩むものです。ただ、少しでも早く決断すれば、その後に採りうる選択肢も増え、前向きかつ柔軟に次の手が考えられるようになり、さまざまな可能性が広がります。まだまだ気力体力とも十分なうちに、経営者という立場から一歩離れて精神的にも余裕ができることで、今までとは違った立場や視点で経営への助言や応援もできるようになります。

 同じ太陽でも“初日の出”になればありがたく感じるように、自分自身がどういう気持ちで向き合うかで物事の捉え方は大きく変わってきます。きっと“事業承継”も同じかと思います。なにをもって区切りや節目とするのか、どこで線を引くか、気持ちの持ち方によって、昨日とは違った景色が見えてくるはずです。今年こそ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか?もちろん、一歩踏み出すことで悩みに悩む一年になるかもしれません。でも、今、勇気を持って踏み出した“一歩”で、来年の初日の光はまた違った輝きに映ることになるはずです。

<真>
2017年1月